これまで髪の毛を石鹸や石鹸シャンプーで洗ったことはありますか?
もし洗ったことがある方は、とても嫌な思いをしたのではないでしょうか。
石鹸は肌には比較的やさしいのですが、髪の毛との相性は最悪です。
それは、石鹸の成分と水の中に含まれている成分に理由があります。
石鹼シャンプーで髪を洗うと、水に含まれているCa²⁺(カルシウムイオン)とMg²⁺(マグネシウムイオン)が石鹸成分と反応し、俗に言う「石鹸カス」を生み出します。
この石鹸カスは水に溶けないので、髪の毛に付着したら洗い流すことができず、髪の毛がギシギシしたり、バシバシになったりと、とても厄介なものです。
石鹼は、油脂(高級脂肪酸¹)に水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの強いアルカリ性の物質を加え、それに熱を加えることによって作られます。
石鹼を一言でいうと界面活性剤の塊です。
脂肪酸は弱酸性ですが、強アルカリ性と結合するため石鹸は弱アルカリ性です。
化学式で表すと、
RーCOOH+NaOH=RーCOONa+H₂O (ナトリウムの場合)
となりますが、肌にやさしい石鹸を作る際は高級脂肪酸¹を使いますので、C(炭素)が12以上の化学式になります。
高級脂肪酸¹ : 脂肪酸(RCOOH)の中で、C₁₂以上のもの
上述した通り、石鹸成分は R-COONa ですが、それに水を加えると水に含まれるCa²⁺(カルシウムイオン)とMg²⁺(マグネシウムイオン)が石鹸成分と反応し、水に溶けない非常に厄介なものを生み出します。
〇 カルシウムイオンと反応すると
2R-COONa+Ca(OH)₂ ➡ (R-COO)₂Ca+2NaOH
〇 マグネシウムイオンと反応すると
2R-COONa+Mg(OH)₂ ➡ (R-COO)₂Mg+2NaOH
となり、(R-COO)₂Ca と (R-COO)₂Mg が水に溶けない石鹸(金属石鹸)になります。
金属石鹼は「石鹸カス」とも言われ、一度髪の毛に付着するとなかなか洗い流すことができず、目に見えない「石鹸カス」が残ってしまいます。
結果、髪の毛がギシギシしたりバシバシになったりと非常に厄介な状態になります。
ショートヘアーの方は気づきにくいかも知れませんが、ロングヘアーの方はもう二度と使いたくないと思うくらい髪の毛が悲惨なことになります。
日本は軟水でミネラル濃度が低いのでまだマシなのですが、ヨーロッパなど硬水の地域ではより多くのCa²⁺やMg²⁺と結びつくので、とても使えたものではありません。
どうしても石鹸で全身洗いたい場合は、熱々のお湯で髪を流すと石鹸カスは落ちますが現実的ではありません。
とは言え、お肌には比較的やさしい界面活性剤なので、体を洗う時や髪の毛の少ない赤ちゃんには良いかも知れません。